ロンドンのペッカムで生まれ、台湾系の血を引くカマール・ウィリアムス。多様なバックグラウンドとアート、カルチャーが混じり合うサウスロンドンのストリートから始まったキャリアは、ジャズとダンス・ミュージックを横断する独特の感性で世界中から絶大な人気を誇っている。ヘンリー・ウー名義やユセフ・デイズとのデュオ、ユセフ・カマールがイギリスに新たなジャズの波をもたらしたことは記憶に新しく、本名義では2018年のファースト・アルバム『The Return』、2020年に『Wu Hen』をリリース。そして2023年に満を辞して新作、『Stings』を発表。パンデミックの最中に書き上げられたというこの作品は孤独、内省、そして深い精神性が数多くのレイヤーと共に再現されており、時にドビュッシーを連想させるような印象派の交響曲の断片やヒップホップ、エレクトロニックビートのもつ宇宙的な領域、そして故・坂本龍一の変幻自在で自然と調和されたサウンドを思い起こさせる。
更新日:2024/01/08