ByetoneことOlaf Benderが初めて実験的な作品に取り組んだのは、1980年代のことだった。映画という媒体で行った実験的試みがきっかけとなり、Benderは東ドイツのアンダーグラウンドバンドAG Geigeと出会い、1988年にはこのバンドの正式メンバーに加わった。Benderは、このバンドと活動を共にする中で、音楽分野に関わるようになった。
1989年のベルリンの壁崩壊後、Benderは音楽販売業に従事した。そこで得た経験から、Benderは自身の音楽を自身で公開できないかと考えるようになった。Benderは、Frank Bretschneiderとともに、1996年にレコードレーベルのrastermusicを立ち上げた。rastermusicで2人が目指したのは、自分たちや同様の取り組みを行っているアーティストのエレクトロミュージックのプロジェクトを公開することだった。エレクトロニックミュージックのサウンドを作り出すには、特別なプロセスが必要となる、そのため、このレーベルとその製品をグラフィックで表現する上でも、その特別なプロセスを反映させるべきだと2人は考えた。rastermusicが手がけた最初期の作品の1つに、Signalというプロジェクトがある。Olaf Bender、Frank Bretschneider、およびCarsten Nicolaiによるコラボレーション作品だ。当時、Nicolaiは、サブレーベルのnotonを運営していた。最終的に、notonは1999年にrastermusicと合併し、raster-notonが誕生した。2017年5月、raster-notonは解散し、その後Benderは、新たに立ち上げたレーベルであるrasterを運営している。
Benderは、レーベルの経営に加えて、レーベルの代名詞的存在となっている独特なカバーデザインも担当している。さらにBenderは、Byetoneとして、ソロでのパフォーマンス活動も行っている。
Benderは、デジタル技術を用いて音楽制作を行っている。サイン波の音源を組み合わせて、複雑な音響を織り上げていくのだ。リズムを生み出すにあたっては、デジタルクリックおよびエフェクトプラグインがなくてはならないツールだ。Benderはさらに、抽象的な動きで音楽を支えるビジュアル要素として、動きゆく光を演出している。音楽のリズムがグラフィックのリズムに変換されていくのだ。